ちょうど一ヶ月前…
ポンを産んで、まだ入院している時の話です。
小さく産まれたポンは
しばらく保育器に入っていました。
ポンの翌日に産まれた子が三人いたのですが
どの子とも明らかに
手足の太さ・頭の大きさが違っていました。
新生児室の真正面が私の病室だったのですが、
保育器に入っていたせいもあって、
ポンのなき声は全く聞こえず…。
聞こえてくる声はいつも別の子でした。
手術中、麻酔で寝てしまった私(^_^;)
なので、生まれて数日経っていたのに、
まだ泣き声を聞いたことがありませんでした。
術後3日目には、…痛み止めの効果もあって、
私はわりと普通に歩けるようになっていました。
予定では五日目から母子同室。。だったのですが、
体重が2500gを超えなければ
保育器から出すことはできません。
当然、同室にいることができず、お世話できません。
お世話のない入院生活は退屈で仕方ありませんでした
が、
二人目育児というのもあって、
この退屈さがいかにありがたいかをすでに知っています(笑)
だから、抱えていた仕事や、今後のやりくりなど、
今のうち!と思うことを、ひたすら病室で片付けていました。
ポンのことも勿論気にはなっていました。
病室の前の新生児室の壁ごしにはいつでも会えるけど、
そんなにしょっちゅう見に行くのも…と思って、
1日に数回何かの用事の際に見に行くくらいでした。
産後五日目。
おっぱいの張りはなかったのですが、
「搾乳して初乳を赤ちゃんにあげましょうかね」
と看護師さんから提案が。
そして、さらに看護師さん
「保育器ごしになるけどミルクあげてみる?」
と。
早くポンに触れてみたかったので、もちろん即答。
初授乳をすることになりました。
ナースセンターに入り、エプロンをつけ、手洗いと消毒。
普通なら入ることはできない新生児室に入室。
保育器の穴から手をつっこみ、はじめての授乳!
ポンの頭の温かさ、重さが、
産後ようやく、この子のママである実感をくれました。
なつかしい感覚と、赤ちゃんのぬくさを味わっていると…
ふと気づくと、
新生児室の反対側(普段見ている廊下側)に
ある女性が、ニコニコしながら、私の授乳を見ていました。
その女性には見慣れた点滴がついてましたので
切迫早産で入院中…とすぐわかりました。
お腹の大きな彼女もまた
もうすぐ赤ちゃんが産まれるのでしょう。
「きっともうすぐ、」
と思って見てるのかな?
私がふと顔をあげると、
向こうも私の視線に気がついたのか
お互いに目が合いました。
ニコッと笑うと、
彼女もまた笑いました。
窓があるので会話こそできませんが
しばらく二人して、
ミルクを飲むポンを見つめていました。
私は彼女に見覚えがありました。
いつも新生児室の前に、点滴をつけてやってきて
赤ちゃんを見つめている
…
そうだ、あの人だ。
私も切迫早産で入院をしていましたが、
「安静」を言われているので、
むやみに立ち歩いてはいけないだろう…と、
ほとんど病室のベッドに寝転がって過ごしていました。
なのに、い~けないんだ(`o´)
って、いうわけではなく(笑)
よほど入院が長くて退屈なのかな?とか
よほど赤ちゃんを見るのが好きなのかな?とか
そういうふうに印象を持っていました。
いずれにしても、よく見かける彼女。
実は、私だけでなく、
毎日見舞いに来てくれてた私の母の目にも
留まっていたようでした。
退院の日。
母とダイくんが迎えに来てくれました。
私が着替えている間
ダイくんは部屋をあちこち物色。
母は「ポンちゃんを見てくる」と、新生児室へ。
ところが何分経っても
母が戻ってきません。
私とダイくんが部屋のドアを開け、新生児室をのぞくと…
母が例の女性と話していました。
私とダイくんが行くと、
話を切り上げ、彼女は病室へ戻っていきました。
私が聞くより前に、母の方から
「中国人のお姉ちゃんと話しよった」
と言い出してきました。
「中国の人なの?」
「うん。」
話したことなんてなかったから、
顔立ちだけでは全くわかりませんでした。
そう言われれば、入院部屋の1つに大部屋があるのですが
そこに中国人らしい名字の人の名前を見たことがありました。
「あの人は、いつ~もポンちゃんばっかり見よらしたけん~」
(・_・;)え?
そうなの?
赤ちゃんを見てたわけではなく?
うちの子を?
母は毎日見舞いに来ているとはいえ、短時間。
それでも印象に残っているから、よっぽど
見てくれていたってことなのか?
退院時、帰りの車の中で
母は女性との会話を話してくれた。
そもそもは、母が、
よくポンのことを見ている彼女のことが気になっていたので、
その日もまたポンを見ていた彼女に、
思いきって話しかけてみたそうな。
彼女が言うには、
ポンが他の子と比べて小さいから
特別気になる、らしい。
「ちっさいけど、とても元気よ」
「この子はよく笑ってくれる」
それを聞いた時、私は一瞬にいろんなことを考えて、
涙があふれそうになりました。
私はポンのことを、あまり見に来てなかったけど…
その間にこの女性は何度もポンを見に来ていて
私の知らないことを何でも知っている…。
親である私も、まだポンの笑った顔なんてみたことないのに
彼女は毎日見てたから、
ポンのそんな顔も見てるし
ポンもまた笑ってくれたのかな?とか。
そんな、嫉妬のような、反省のような、
マイナスな思いが込み上げたのはほんの束の間。
それよりも何よりも
自分の子どものことを、こんなに見てくれる人がいるなんて…
なんて嬉しいんだろう。
本当、素直にそう思えました。
私はポンの将来が一気に
「この子はきっと大丈夫」
と思えました。
私は、ポンを見てくれていた、彼女に、
ありがとうと伝えたくてたまりませんでした。
その日退院したのは私だけで、
まだ体重が小さいポンは
保育器からも出られず、退院は延期。
しばらくは搾乳をフリージングして
通院して授乳、という形をとることになった。
保育器から出れれば、直母もできるし、
体重もすぐ増えるはずよ、と言われていた。
実際その通りで
ポンが保育器から出てからは
一日ごとに50gは増えていき、
すぐに退院できる体重に近づいていった。
通院の間、私はひそかに彼女に会えないか期待していた。
もちろん、病室に行けば会えるとは思うが、
そこはちょっと遠慮してしまう・・・(^_^;)
母の聞いた話だと、
彼女も予定帝王切開。
点滴からして、おそらく切迫早産だから、
たぶんこのまま入院を続けてそのまま出産するのではないか?
と勝手に予想した。
とすると、彼女はまだしばらく病院にいるはず。
私が退院してから、5日経った日。
朝早く病院から、
「退院できるので迎えに来てください」
と連絡があった。
迎えに行くと、
「ちょっと待ってね」と看護師さんに言われ、
しばし時間ができた。
新生児室を眺めていると…
!
例の女性が偶然、新生児室を見にやってきた。
思いきって話しかけてみました。
「こんにちは!(^◇^;)」
「…こにちは(^_^)」
「息子がやっと退院できることになりました(^◇^;)」
「そう^_^)?」
気のせいなのか、
反応が薄かった。
あんなにポンを見ていた人だから、
喜んでくれると思っていたのですが…
あとになってよく考えたら、
ポンのことは見てたけど、
体重が云々という理由で入院が長引いているとか、
そういう細かいことは知らないわけで(^_^;)
それに、
私も母から話を聞いただけで
彼女のことをよくは知らなかったのですが…
母と会話したくらいだから、
日本語が流暢なのかと勝手に思っていたら…
片言だし、
ちょっと長い言葉を言うと
「?」というような反応をしていた。
ニ・三、言葉を交わしはしたけれど、たわいのない話しかできず…
肝心の「お礼を言いたい」というミッションには、
『うまく説明できるか?
果たして突然言って理解してもらえるか?』
と、躊躇して、口にできず…
そうこうしてるうちに、看護師さんからお呼びがかかり、
ポンの元へ強制的に立ち去ることになった。
結局、せっかくチャンスがあったのに、思いの丈は伝えられず(>_<)
ポンを、入院中ずっと見てくれていた中国人女性。
見てくれていた?
勝手に見てた…?
(・ω・;)
ま、そこはとりようですが…
私的には、なぜだか、嬉しい出来事だったので、
お礼を言いたい一心だったのですが…
なにせ、
「お礼をいうこと?」ということだし、
彼女は日本語が片言だったので、
どの程度伝わるのか自信がない。
そんなわけで、言いたいけど言えぬまま、
ポンは退院し、家での生活がはじまりました。
:::
1か月検診の日。
病院に行くのは、おそらく最後(の予定)。
その日は、彼女ももう出産してるはず!
会えるのはラストチャンス!と思って、
1ヶ月検診へ行きました。
個人病院なのに、いつも長い待ち時間。
その日も、二時間はゆうにかかりました。
そろそろ授乳で泣きそうだし…
二時間抱っこは疲れたし…
で、そのまま早く帰りたい気分でした…が
病院の玄関で右往左往して悩みました(-.-;)
よし!
とりあえず産まれたかだけ確認してみよう!
二階の入院棟へ。そこで新生児室をのぞいてみることにしました。
すると…
(-o-;)
いない!( ̄○ ̄;)
いつも誰かしら赤ちゃんが寝てる新生児室が、
奇跡的にカラッポでした。
珍しい…でもこれじゃわからん(^_^;)
と思っていると、
新生児室のすぐ近くの病室の名札が、中国人姓でした。
いた!
大部屋から移動してるし、やっぱり産まれてるはず!
扉を叩けば彼女はいると思うのですが…
知り合いという知り合いでもないし…
(たぶん)初ママさんはいろいろ大変で
疲れてるだろうから、寝てるかもしれない。
帝王切開だから、もしかしたらまだ動けないかも?
(それだったら赤ちゃんはどこ?)
など…いろいろ考えてしまい(^_^;)
閉まったドアをノックするのに、ひどく躊躇してしまいました。
そうだ…
思いきって、ナースセンターへ行き、看護師さんに聞いてみることにした。
私の顔をまだ覚えていてくれた看護師さん。
私と中国人女性の接点など知らないから、
なぜ、聞くのか?と思ったかもしれませんが…
聞かれた通り、出産日と部屋にいるであろうことを教えてくれました。
意を決して彼女の病室をノックした。
突然の訪問に、女性はすごく驚いていたようでした。(当たり前か)
でも、私の顔も覚えていてくれたようで、話は早かった(^_^;)
「1ヶ月検診に来たので、
そろそろ産まれてるかもと思ってきてみました。おめでとうございます。」
ベッド横に、寝ている赤ちゃんがいました。
女の子だそうです。
ポンを見せると、
「うわぁ~(*^ο^*)大きくなったね」と。
産まれてすぐは2200だった体重が、3200になってたのですが、
顔の大きさ(頭囲)がまず大きくなったとわかるので、
彼女にも、成長は一目瞭然だったようです(*^_^*)
そして、
やってほしいな…と思っていた
ポンを抱っこ
も叶いました。
彼女はまだ赤ちゃん産んで間もないというのに、
もう手慣れたもんで、ひょいとポンを抱っこしてくれました。
ポンを見つめる彼女は
「あんなに小さかったのにね~。」と。
今こそ言うべきときだ。
そう思った私は
「ずっと見てくれてたんですよね。入院中。母に聞きました」
そう言うと、彼女はなんだか恥ずかしそうに笑った。
とりあえず話は通じてるようだ。
「なんか変な話ですけどf^_^;
自分の子を見てくれてる人がいるのがとても嬉しくて、、
ありがとうってずっと言いたかったんです。」
やっと言えた。
彼女は
「いえいえ、そんな」
というような反応で、でも、とても嬉しそうな顔をしてくれた。
「こちらこそ訪ねてきてくれてありがとう(*^_^*)」
そう言ってもらえて、私も決断の甲斐がありました。よかった。
父に迎えに来てもらうことになっていたので、
長居ができず、少し話をしただけでした。
私は彼女に連絡先を聞くことにしました。
(※私からメアドを聞くなんて、本当に珍しいことです)
彼女は、電話番号をメモってくれました。
「あ、よかったらメアドを…」と言うと
う~ん?(・_・;)とちょっと困ったような反応をした彼女。
「私メールは苦手で…。」
携帯をカチカチ動かして、
どうやら自分のアドレスを調べているようでしたが、
結局わからないようで。
かわりに私のメアドを教えて、その場は別れました。
話の中で、明日が退院と言っていたので、
退院して落ち着いてからメールちょうだいと伝えたのですが
その日も、翌日もメールは来ませんでした。
メールこない…と、うっすら思っていたら
彼女が退院したであろう日の夕方。
見知らぬ番号からの電話に出てみると、彼女からの電話でした。
メールは送ろうとしたけど、ダメだったようで…。
もしかしたら、私がアドレスを間違って教えた…かもしれませんが
彼女の言う「メールは苦手」は、
本当にからっきしダメだったようです。
病院での会話の中に
「またよかったら会いましょう」
と彼女が言ってくれました。
「もちろん」
と喜んで返事したが…
私は里帰り出産中で、三月には東京に帰る、という話をしました。
そうなんだ…という彼女は心なしか少しガッカリしたような表情に見えました。
かってな推測ですが…
日本に知り合いがあまりいない…とすれば、
彼女にとっても私との出会いは嬉しいものだったかもしれません。
しかも初ママ。
ママ友が欲しいと思うだろうから、
なってあげられたと思うのですが…
メールが苦手で
電話だけ…
電話って、相手がママだと、
かけるタイミングが難しいなぁと思ってしまうんですよね(^_^;)
メールだったら、返事こなくったって、とりあえず送ることできるのに…
しかも
電話で改めて彼女は
「今度ぜひ食事にでも」
と言ってくれたのに
「喜んで!…あ、でも」
私には車がないから、遠出ができないけど…(>_<)
と言うと、彼女は「あ~…」と
返事に詰まっていた。
そこから話が繋がらず、
とりあえず帰る前にまた連絡するね、で電話は終わった。
せっかくの縁なのに
なんだかうまくいかない(>_<)
っていうか、私が接し方が下手だなぁ…と思ってしまう。
こういう経緯で、中国人女性と知り合いました。
そして、今後どうしていいか、迷ってます(>_<)
もっと気楽に電話をかければいいのかもしれないけど…
もともと私が何も思わなければ、こんな縁もできなかったから、
そのまま切れてしまっても、どうってこともないのかもしれませんが…
東京でよく外国人ママの方が、
うまく話せずにポツンとしているのを見ていたので、
なんだか気になるのもあるんです。
本当お節介な部分もありますが、不思議な縁を大事にしたい部分も。
いろいろ思ってしまって、結局あれから電話ができません…。